ニューラルネットワークによる デリバティブ価格評価
近年、市場業務やリスク管理業務におけるAI活用の中でも、特に注目されているのが、高度な数値計算を要するデリバティブ評価の分野です。デリバティブ評価モデルの高度化・複雑化に加え、PFEやXVA評価、規制対応に伴う計算要件の増加により、商品評価やリスク計測にかかる計算コストは急速に増大しています。1回のバッチ処理で数億パスを超えるモンテカルロ法による評価が必要となるケースも珍しくなく、限られた処理時間の中で、計算基盤への継続的な投資が求められています。
本稿では、こうした課題に対する一つの解決策として、当社が開発したニューラルネットワーク・アーキテクチャを活用したデリバティブ・プライシング手法をご紹介します。本手法では、リカレント・ニューラルネットワーク(RNN)、ゲート付き回帰ユニット(GRU)、および潜在空間表現を組み合わせることで、従来のモンテカルロ法と同等の計算精度を維持しつつ、1秒あたり数百万件のプライシングおよびグリークス算出を実現しています。
実証実験では、オートコーラブルの評価誤差を約0.03%に抑え、従来手法と比較して最大約1万7千倍の計算速度向上を達成しました。本手法は、エキゾチック・デリバティブや仕組債など、複雑な商品のプライシングに幅広く応用可能であり、当社では2025年より段階的なサービス提供を予定しています。
このアプローチは、計算の高速化と結果の安定化・精緻化を同時に実現するものであり、PFE/XVA評価、ダイナミック・ヘッジ、リアルタイムVaR計測など、高度なモデル運用が求められるユースケースにおいて、強力な選択肢となると考えています。また、計算リソースの削減により、インフラコストの抑制にも大きく貢献します。
本稿が、皆様のデリバティブ・プライシングおよびリスク管理の高度化に向けた取り組みの一助となれば幸いです。
Download the whitepaper
Register for free access to hundreds of resources.